恋のはじまりは曖昧で

帰り際、もうちょっと遊びたいと虎太郎が泣きながら駄々を捏ねてホントに散々だった。
お姉ちゃんに宥められ、田中主任からも『また会えるから』と言ってもらい、ようやく納得した。

『こーちゃん、やくそくわすれないでね』と涙ながらに言ってお姉ちゃんに抱っこされ、未練タラタラな感じでこの部屋を出た。
遠距離恋愛のカップルかよ!という別れ際だったのは笑ってしまった。
でも、その時の虎太郎は私には見向きもしなかったのは問題アリな気がする。

何かどっと疲れた。
朝から虎太郎に付き合わされ、公園でかなり体力を消耗した。
私的には、虎太郎以外にも疲れる原因があった。

それは、お姉ちゃんが田中主任のことを私の彼氏と勘違いしてしまったんだ。
ニヤニヤ笑いながら『いつから付き合ってんの?』と耳打ちしてくるので、焦りながらもどうしてこうなったのかを説明した。
私の言葉を信じてくれたのかは怪しい気がするけど。

ふと会話が途切れ、静寂に包まれた。
気が付くと、この狭い部屋に田中主任と二人きりで、今頃になって緊張してきた。
こんなことなら、テレビでもつけておけばよかった。
自分の部屋なのに落ち着かなくて、そわそわする。

部屋に置かれている時計を見ると夜の八時を回っている。
このあと、どうしたらいいんだろう。
そっと田中主任の様子を窺うと、同じように私の方に視線を向けてきていてバチッと目が合い心臓が跳ねた。
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