恋のはじまりは曖昧で
***

『今日は飲みまくるわよ』

三浦さんは、会社を出る前に恐ろしい宣言をした通り、乾杯直後にビールを一気に飲み干した。

それを見て、私と弥生さんは顔を見合わせて苦笑いした。
こっちに被害がこなければいいね、と二人で話しながら目の前の軟骨の唐揚げを食べる。

七月半ばの金曜日、暑気払いということで居酒屋で営業部の飲み会が行われていた。
ちょうど仕事もそんなに忙しくない時期で、珍しく原田部長を始め営業部全員参加している。

「あー、それにしてもいい披露宴だったわね」

橋本さんが写真を見ながら焼き鳥を頬張る。
その写真と言うのは、河野課長の披露宴の時の写真だ。

「ですね。そういえば、橋本さんて小林から無理矢理ブーケをもらってませんでした?」

「ちょっと失礼ね。無理矢理じゃないわよ。式は事前に身内だけで挙げてブーケトスはやらないみたいなのよ。それで、披露宴の時に花音が持っていたブーケはどうするの?って聞いたらくれるって言うからもらったのよ」

佐藤さんの言葉に橋本さんは心外とばかりに反論する。

「そりゃ、橋本さんにわざわざそんなこと言われたら花音だって渡すでしょ」

金沢さんが親し気に“花音”と名前で呼び捨てにしてる。
課長の奥さんはみんなから好かれていたんだなということが会話の端々で感じられた。

金沢さんも加わり、披露宴の時の話で盛り上がっている。
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