恋のはじまりは曖昧で
「橋本さん、それぐらいにしてやってよ。せっかく田中もチャラ男から生まれ変わってまともな男になったんだから。俺たちはいい報告があるまでそっとしといてやろう」
原田部長は笑いながら言う。
それを聞いて橋本さんは、パッと手を離した。
「そうですね。前はウザイぐらい軽いノリで喋っていてイライラしてたけど、それをしなくなったのは本当に大進歩だと思う。人は成長する生き物だって改めて感じたわ」
田中主任を見ながらしみじみと言う。
「まぁ、下手に私らが突っ込んで失敗しても困るし。今度こそ田中にはいい恋をして幸せになってもらいたいと思っているので」
「何すか、それ。ぶっちゃけ、橋本さんには言われたくないですよ。あと、失敗って縁起でもないこと言わないでくださいよ!」
田中主任は不貞腐れたように言って、ビールを飲んでいた。
ふと、橋本さんと弥生さんと昼ご飯を食べに行った時のことを思い出した。
そういえば、あの時も橋本さんは田中主任には幸せになってもらいたいと言っていた。
なんだかんだ言いながらも、橋本さんは田中主任のことを気にかけているんだ。
この営業部は、アットホームな雰囲気で仲がいい。
原田部長を筆頭に、みんなユーモアがあり、こういう飲み会の席では笑いが絶えない。
同じ空間にいるだけで楽しくなってきて、気分よく過ごせている。
この部署で働けてよかったと心から思った。