恋のはじまりは曖昧で

「浅村くんもなかなかやるわね。まだまだひよっこかと思っていたのに」

「カレ、草食系かと思っていたけど、実は肉食系なのかもね。あのやり取りはちょっと強引な気もしたけどいい感じだったわ」

「そうね。でも、いきなりお持ち帰りされたりしないかな?」

「あー、それはないでしょ。まだ浅村くんにそこまでの度胸はないわ」

三浦さんと井口さんの話し声が聞こえる。
私も浅村くんて積極的な一面があるんだ、なんて感心してしまった。

「じゃ、私らは二次会に行きますか」

「そうね。紗彩はどうする?」

「すみません。せっかくですけど、私は失礼させてもらいます。何か眠くなっちゃって」

「そうなの?これからが楽しくなるのに」

仕方ないわね、といった表情の三浦さん。

「あらあら、ここにお子ちゃまがいたわ。もうお寝んねの時間なのね」

井口さんは私の頭を撫でながら、からかうように言う。
毒舌お姉さんは今日も健在だ。
確かに自分でもそう思うので一切、反論できない。

「一人で帰れる?」

「はい、大丈夫です。まだ、電車もあるので」

「でも、ここから駅まで一人は危ないでしょ」

もう一度、大丈夫ですと言おうとしたら意外な人に声をかけられた。

「高瀬さん、俺が送るよ」

その言葉を発したのは、まさかの田中主任だ。
< 145 / 270 >

この作品をシェア

pagetop