恋のはじまりは曖昧で
「浅村くんもなかなかやるわね。まだまだひよっこかと思っていたのに」
「カレ、草食系かと思っていたけど、実は肉食系なのかもね。あのやり取りはちょっと強引な気もしたけどいい感じだったわ」
「そうね。でも、いきなりお持ち帰りされたりしないかな?」
「あー、それはないでしょ。まだ浅村くんにそこまでの度胸はないわ」
三浦さんと井口さんの話し声が聞こえる。
私も浅村くんて積極的な一面があるんだ、なんて感心してしまった。
「じゃ、私らは二次会に行きますか」
「そうね。紗彩はどうする?」
「すみません。せっかくですけど、私は失礼させてもらいます。何か眠くなっちゃって」
「そうなの?これからが楽しくなるのに」
仕方ないわね、といった表情の三浦さん。
「あらあら、ここにお子ちゃまがいたわ。もうお寝んねの時間なのね」
井口さんは私の頭を撫でながら、からかうように言う。
毒舌お姉さんは今日も健在だ。
確かに自分でもそう思うので一切、反論できない。
「一人で帰れる?」
「はい、大丈夫です。まだ、電車もあるので」
「でも、ここから駅まで一人は危ないでしょ」
もう一度、大丈夫ですと言おうとしたら意外な人に声をかけられた。
「高瀬さん、俺が送るよ」
その言葉を発したのは、まさかの田中主任だ。