恋のはじまりは曖昧で
それには三浦さんと井口さんも驚いたみたいで、「どうして?」という表情で顔を見合わせている。
いや、私も驚いているんですけどね。
「田中主任は二次会に行かれないんですか?」
「あぁ。明日、朝イチで現場に行かないといけないから最初から帰るつもりだったんだ。高瀬さんと家が近所だから、どうせなら一緒にタクシーで帰ればいいと思って」
「あ、そうなんですね」
「じゃあ紗彩ちゃんのこと、お願いします」
「了解。高瀬さん、行こうか」
三浦さんたちに見送られ、私は田中主任と帰ることになった。
タクシーの運転手に私のマンション付近の住所を告げ、後部座席に田中主任と並んで座る。
よく考えたら、最近、田中主任と一緒にいる確率がかなり高いかもしれない。
ソワソワしながらそんなことを考えていたら、着信音が鳴った。
「高瀬さん、ちょっとごめん。電話に出る」
「あ、はい」
「もしもし。何だよ、真琴……」
田中主任はスマホを耳にあてて話し出した。
話す声のトーンが少し低く、会話の内容からプライベートな電話だと気づく。
このまま黙っていたら聞き耳を立ててしまいそうなので、さっき帰り際に橋本さんから渡された封筒をバッグから取り出して開封した。