恋のはじまりは曖昧で

あ、写真だ。

『披露宴に来れなかった紗彩にプレゼント!』と書かれた付箋が貼られている。

主役の河野課長と奥さんを囲んで営業部の人たちが笑顔で写っていた。
もちろん、今、私の隣に座っている田中主任もピースサインで笑っている。

「それ、みんないい顔してるな」

不意に声をかけられドキッとする。
田中主任は電話が終わったみたいで、私の手元の写真を見ていた。

「ホントですね。みなさん、仲がいいんだっていうのが写真から伝わってきます」

肩を組んだり、ふざけ合ったりして楽しそう。
ちゃっかり浅村くんも笑顔で写っているし。
自分で欠席することを決めたのに、こういう集合写真を目の当たりにすると、羨ましいなと思ってしまう。
人間て理不尽な生き物だな。

「そうだな。でも、高瀬さんが写ってないのが俺的には残念だけど」

「へっ?」

残念ってどういうことだろう。
不意にそんなことを言われると、その意味を考えてしまう。

「あ、何なら高瀬さんの顔写真を切り取ってここに貼ろうか?」

ニヤリと笑いながら写真の右上の空いているスペースを指さす。
それって、集合写真を撮る時に欠席した人が加工されてそこにポツンと写って変に目立ってしまうヤツじゃないんですか?
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