恋のはじまりは曖昧で

「嬉しいです」

私の答えに浩介さんはホッとしたように息をつく。
そして、思い出したかのように口を開く。

「なぁ、俺に隠してることないか?」

「え、隠してることですか?特にないと思いますけど」

いきなりそんなことを聞かれ首を傾げる。
何かあったっけ?

「ユーワイエーの真壁くん」

まさかの名前にドキリとし、キョロキョロと視線を泳がせてしまう。
そんなことをしたら、隠し事をしていますと言っているようなものなのに。
浩介さんがそれを見逃す訳がなく、目ざとく気付かれた。

「その表情は思い当たる事があるんだな」

バツが悪く身体を縮こませる。

「あの、どうして真壁さんのことを……」

「俺をだしにして食事に誘われてるだろ。この前、取引先の人たちと飲み会をした時に会って、紗彩のことを聞かれたよ。『彼氏はいるのか?』とかね」

物言いたげな目で私を見る。
そうなのだ。
取引先主催のパーティーで真壁さんに会って以降、何度か電話対応している時に世間話をすることがあって。
その時に、浩介さんを含めた数人で食事に行かないかって誘われて「機会があれば」とか言ってかわしていたんだ。

「ハッキリ言ってやったよ。紗彩には彼氏がいるから二度と余計なことをしない方がいいって。よくもまあ、俺の前でそんなことが言えたもんだよ」

不機嫌な表情で言う。
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