恋のはじまりは曖昧で

「ありがとうございます。どう対応していいか困ってたので」

こんなことでお礼を言うのは変かなとは思ったけど、助かったのは事実だ。

「本当は真壁くんに聞かされる前に相談して欲しかったけどな」

「ごめんなさい」

人から向けられる好意にそこまで敏感ではない。
だけど、言葉の端々で真壁さんは私をそういった意味で誘っていたのかなと思っていた。
それでも、浩介さんに相談するのは自意識過剰じゃないのかって思われるのが嫌で言いにくかった。

「どうやら俺は独占欲が強いみたいだ。自分の彼女にちょっかい出されるのは我慢ならない。次からは些細なことでもいいから何でも相談すること」

「はい」

「紗彩は可愛いから変な虫がつかないか心配だ」

ブツブツとそんなことを言う。
これは何度も思うことだけど、私はモテない。
現に浩介さんと付き合うまで彼氏がいなかった。

でも、浩介さんにヤキモチを焼かれるのは何だかくすぐったい。
私のことを考えてくれているんだと思うだけで顔が綻ぶ。
不意に浩介さんの手が私の左手を掴んだ。

「ここ、今から予約しとくから」

そう言って左手薬指に唇を寄せた。
夢でも見ているんじゃないかと思うぐらい幸せで言葉が出ない。
幸せの涙があふれてくる。
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