間違いからはじまる
「ボーッと突っ立ってないで座れば?」
私は仕方なく目の前のソファーに座った。
なぜ私はここに居るのだろう。
目の前にはネクタイを緩めワイシャツのボタンをかなり開けている都築。
いやでもその胸元を見るとあの朝の光景を思い出してしまうので、目を背け気を紛らわせようと手元にあったビールをぐいっと流し込んだ。
「これ飲んだら帰るから」
「お前、あの日のこと知りたくねーの?」
缶ビールを口元に持っていき意地悪な瞳で私を射るように見つめる。
ちゃんと聞いたらこの男はまともに話をしてくれるんだろうか。
記憶のない私にとっては都築と関係を持った事だけが悔やまれる事なのだから。
「…お願い。ちゃんと教えて」
「了解」
そこから都築はきちんと話し始めた。
かなり酔っていた私をタクシーに乗せたもののその中で眠り込んでしまったので仕方なく自分のマンションに連れて来たこと。
部屋で一度目覚めた私が大声で都築を罵倒し始めたため、キスで口を塞いだら都築自身が止められなくなってしまいあの朝に至るというわけらしい。