間違いからはじまる
あー頭が痛い。きっと夢見が悪くて寝不足だったせいだ。そしてさらに今朝の出来事。もうこれ以上都築に振り回されたくない。
眉間を押さえつつパソコンに向かっていたら、向かい側に座っている後輩が声をかけてきた。
「侑李(ゆうり)先輩。大丈夫ですか?これ飲んで元気出してください」
「あー、ありがとう」
そう言って受け取ったのは女性用の栄養ドリンク。去年入社してきた神田くんは男子のくせにやけに気が利くのだ。その上、顔もいいから人気がある。
ほら。私がドリンクを受け取っただけで周りが殺気立っている。これだから顔がいい男と関わるのは嫌なのだ。
ふとパソコンから視線を上げるとオフィスを横切って行く都築と目が合った。よく分からないが睨まれているように思える。
きっとまだ昨日の事を根に持っているのだろう。執念深い男は嫌ね。私は都築からさっさと視線を外しまた仕事に集中した。
なんとか頑張ったお陰で定時過ぎに仕事も終了。亜美でも誘って愚痴を聞いてもらおうと思ったら、合コンだからと簡単に断られてしまった。仕方ない。家で静かに飲もう。