ヤンデレなら、病んで下さい!
「可愛い」
「し、紫暮さんは、かっこいい、で、す」
「そんな返し含めて愛らしいよ」
腕を掴まれる。舐められた。
執拗に、念入りに。指先から手首まで。
心臓が破裂どころか爆発しそう。
「なんで、手ばっかり」
「どこ、舐めてほしい?」
「そ、そそそ、そんな意味じゃっ」
恥ずかしさに負け、思わず立ち上がる。
彼と距離を取ろうにも、当たり前のように彼は後をついてくる。
やがては壁。追いついた彼の体と挟まれる状態となった。
そういえば、紅葉ちゃんが『壁ドン』だなんて言っていたけど、これがそうなのかな。でも、ドンって音しない。私が音を出すのか。
「雛の身長が高くても好きには違いないけど、こうして包み込むことが出来るのは、やっぱりいいね」
これ以上近づけないというのに、彼は無理やりに体を押し付けてくる。
胸元から圧迫される。苦しい。
「このまま潰したいーーだなんて、やりもしないけど、思っちゃうね。この状態は。雛に意地悪なんかしたくないんだけど、その顔も、いいね」
え、と思う前に、彼が離れる。
ごめんねと、手を繋がれた。
「何だか、今日の紫暮さん、謝ってばかりです」
貝殻繋ぎをしてくる彼は、そうだねえと他人事のように言ってみせた。
「全部、俺が悪いから」
その言葉に、酷く胸を抉られた気がした。
紫暮さんが悪いだなんてことはない。紫暮さんはいつだって、私のためを思ってくれる良い人で、悪いのは全部ーー
「私がっ」
「ねえ、雛。今日はこのまま泊まりなよ。夕飯、雛が好きな物作るから」
話を遮られる。これもまたおかしい。
日本人のくせして、上手く言葉を繋げないどんくさい私に合わせて、彼は最後まできっちりと話を聞いてくれるのに。
なんで。
何かが、おかしい。
もうしかして、嫌われた?
私に合わせるのが嫌になった?
「紫暮さ、ん」
気になるなら聞けばいい。なのに、口から発せられない。
怖くて。
本当に嫌われるのもそうだし、もしも私の勘違いなら、そんなことを思っていたのかと嫌気さされてしまう。
怖かった。
他人の心が見えないのが。
彼は本当に、私のことを今でも好きでいてくれるのか。
『ヤンデレなら、好きでいてくれる』
そんな紅葉ちゃんの言葉が確かなら、彼にはヤンデレというものであってほしいけどーー