ヤンデレなら、病んで下さい!
「紫暮さん、大事な話が」
最初、“この案”を実行することはないと思っていた。
出来るわけがないって、紅葉ちゃんと笑っていたぐらい、“言うはずなかったのに”。
「私、実は……他に好きな、人、が」
一字一句ごとに体温が冷えていくようだった。とんでもないことをしている。嘘でも言ってはいけないのに、彼を試すことで安心を求める。そんな私を悟られたなら、いっそ嫌われてしまった方がいいのか。
その方が、良いのかもしれない。
彼に心配ばかりかけさせる、成長しない私はーー
「だから、別れてほし……っ」
途端、足先から力がなくなった。
彼に支えられたため、転倒することはなかったけどーーなに、これ。
「あたま、いた、い」
ぶつけていないはずなのに、頭痛がする。そうして乗り物酔いのような目眩。
不快に思えた視界のぶれを、瞼を閉じて遮るが、真っ暗になった瞬間、意識が糸よりも細くなった錯覚に陥る。
「それほど“効きが強かった”、か。全部、吐いて。ちょっとは楽になるから」
彼に言われるまで、自分が吐いている自覚もなかった。瞼は、縫ったように開かない。けれども、床を汚してしまったのは必然的だろう。
ごめんなさいと口に出した、つもり。
意識が彼岸にでもあるみたいだ。自分の体なのに、言うことを聞かない。
「いいよ、気にしないで。雛は、悪くない。悪いのは、全部俺。雛は思いもしないだろうけど、酷い人間なんだよ、俺は」
糸が、切れる。
けれども、彼の温もりを感じられて浮遊するかのような心地よさはあった。
「それでも、雛とは絶対に別れないから。どんなことがあってもーー何としてでも、ね」