ヤンデレなら、病んで下さい!
「そんな悲観しなくても。雛は本当に人の悪意を考えないんだね」
「あく、い?」
「コーヒーに一服盛るような悪意の塊が目の前に」
さすがに、理解してしまった。
「うそ、そんな……こと」
なのに違うと否定した。
否定してほしかったのに、彼は笑顔のままで。
「俺、雛の前では嘘をつかないよ。隠し事は山ほどあるけど」
悪意を語る。
寒気の次は鳥肌。察した彼が温めるように私の腕をさすり、舐める。
「でもまさか、吐くとは思わなかった。それは素直に悪いと思っているよ。あの薬、ぜんぜん効かないと飲んでいる俺が思っていたから。雛の体には合わなかったのかな」
「飲んでいるって、紫暮さん、どこか悪いんですか」
「ハハッ、こんなことされても、俺の体の心配してくれるんだ。ありがとう。でも、悪いところはないよ。単に眠れないだけだから。ーー雛のこと、考えすぎて」
前髪をたくしあげる彼。自虐的に唇を引き伸ばす。
「ベッドに入り、目を瞑ると、決まって雛の顔が瞼裏に映る。その日デートしようものなら、会った時からお別れまで雛の言動を思い返し。会えない日なら、会えたその日を思い出す。
そうした後、今度は雛にどんなことをしてあげよう、何をしたら喜ぶか。果ては雛は今、何しているのか。もちろん寝ているのだろうけど、どんな夢を見ているのか。悪夢じゃなければいい、俺の夢なら尚もいい。無理に起こしてでも雛の声が聞きたいだなんて、ワガママを思ったりもしたし、いっそ、会いに行って添い寝したいと馬鹿なことも考えた。
君のことばかりを思って、考えて、いつの間にかアラームが鳴る。そんな毎日が続いてね。ついには仕事に支障が出るものだから、最終手段。
まさか恋人を思って眠れないとは言えないからさ、医者には適当なことしか話してないんだけどーーだからだろうね。弱い薬しか出してもらえなかった。雛が隣にいない日の睡眠時間なんてないに等しいよ」
花でも愛でるかのように、頬に触れ、匂いを嗅がれた。
愛しげに呼ばれる。何度も、ずっと“これを待っていた”と言わんばかりに。