ヤンデレなら、病んで下さい!

「違い、ます。あれは……」

ひくっ、と体が反応する。
彼の一挙一動に敏感になってしまう。

指先も吐息も声も、怖いことされているのに、何で。

「泣いてる」

「……ごめっ、な……さっ」

「怖いんだ。すっごく、いじめたくなるような顔をしてる」

「し、紫暮さん、い、痛いことしないで」

「痛いのも、すぐに楽に(良く)なるよ」


可愛いこと言うなぁ、と撫でられた。
いつもの紫暮さんを垣間見た気がしたのに、口に指をねじ込まれてしまえば、霞となる。

人差し指と中指。舌に乗り、押されたり、挟まれたり。

「噛み切っていいよ」

ふるふる首を横に振る。
そう、と唾液塗れの指を出し、彼は当たり前のように己の口に含む。

「俺にとっての媚薬だ。今まで、我慢(遠慮)してきた自分を賞賛したくーーいいや」

違うか、と彼の顔が曇る。

「臆病者なんだよ、俺」

おおよそ、彼に似つかわしくない言葉を耳にした。

「頭の中を解剖すれば、きっと雛のことしか入っていない。加えて、そのどれもが君の理想とは裏腹の野蛮なことばかり思っている。……したがっているんだ」

睡眠薬を飲ませ、手錠で拘束し、噛みつきと、一連の流れは明らかに私に恐怖を植え付けるもの。

「嫌われてしまうんじゃないかと、怖かった」

聞いて、形は違えど、彼も私と同じなんだと思った。

「私……」

「でも、“遅かれ早かれ”だったね」

見せびらかすように、彼は小さな鍵を右手で摘まんでいた。

「手錠の鍵」

それを、口に含む。

「……っ!」

青ざめた私を楽しむかのように、口を開ける彼。舌の器に乗る鍵、とっさに左手を伸ばしてしまったが、掴まれ、取るのを阻止された。

「ふっ」

閉じられた口で含み笑いをされる。

「逃げたい?」

それなら、手錠の鍵が欲しい。
でも、私はーー

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