涙色の空をキミに。
「…いない、か。」
放課後、美術室に入るとガランとしていて誰もいない空間が目の前に広がる。
荷物を置いて、昨日持ってきた新しいキャンパスを準備室から取り出す。
琉空が来ない美術室は何だか静か。
今までずっと1人だったから慣れていたはずなのに、今になって、
…少し寂しい、なんて。
今回は下書きをしよう、と鉛筆を取り出して無意識のうちについていたため息をかき消すように腕を伸ばした。
テニスの打ち返す音、吹奏楽部の楽器の音。
外からの応援の声。野球部のかけ声。
静寂が流れる美術室に響いて、木霊する。
…聞こうと思うと案外音って聞こえるものだな。
そんなことを考えて、鉛筆を滑らすように動かす。
聞こうとすれば、知ろうとすれば、今まで気付きもしなかったことが見えると思うのに。
…琉空はまるでそれを全て遮ってしまっているような気がする。