涙色の空をキミに。
「じゃあ、夢空またあとでね!」
「彩も夏芽もバスケ頑張ってね。」
清掃も帰りの会も終わって、部活へ足を運ぼうとすると体育着に着替えた夏芽と彩に声をかけられる。
2人は女子バスケ部なんだけど、私は美術部だから、手を振って2人と分かれた。
3階の教室から1階の美術室まで荷物を抱えて1人で歩く。
学校自体がどちらかといったら少人数だから、その中で文化部は美術部と吹奏楽部しかない。
大抵は運動部と吹奏楽部に入っていて、美術部に所属している人は少ない。
…その上、期限までに提出できるなら部活に来なくて家で描いてもいいっていうゆるいルールのおかげで私以外は美術室に来る人はいないんだけど。
電気をつけてガラっと扉を開けると、いつも通り誰もいない空間が広がっている。
「…えっと、準備室に確かキャンバス置いといたよね…?」
黒板のすぐ横にある準備室のドアを開けて、少し大きめのキャンパスを取り出す。
今日から新しい絵になるから、真っ白なそれを近くにあったイーゼルに乗せて、美術室へ持っていく。
大きな窓がいくつかあって、開放感のあるここは、すごく居心地がいい。
外からテニス部のボールを打ち返す音が定期的に聞こえて、3階の吹奏楽の楽器の音が響く。
誰かと一緒に絵を描いたり、家で描くよりもこの空間で描いた方がずっといい絵が描ける。
…なんて思いながらいつもみたいに持っていた荷物から水彩絵の具を取り出して、筆洗バケツに水を入れた。
他の美術部員はペンで描いたりしてイラストみたいな絵を描いたりする人もいるんだけど、
私の場合は昔から水彩絵の具が好きで、ずっと水彩を使っている。
…水彩は透明感がすごく出るし、淡い感じになるからなんとなく好きなんだよね。
水彩用のキャンバスに向かい合って、新しい絵の構想を決めていく。