カメカミ幸福論


「今日の午前中、最初は何かブツブツ言って挙動不審でしたけれど、昼前にむかって凄いスピードで仕事片付けだしたじゃないですか!久しぶりに見ましたよ、先輩の本気!やっとやる気を戻してくれたんですね~」

 ・・・いや、違うけど。

 私は疲れて美紀ちゃんをぼんやりと眺める。もう反論する気も起きなかったのだ。美紀ちゃんは嬉々として、これで立派なお局様の復活ですね、良かった良かった、と話している。

「ほら、派遣で営業1課にきてる数山さん。彼女が何かと亀山さんをコケにするのが、私腹立って仕方ないんです。でもこれで見返してやれます!うちの亀山さんは実は凄いんだからって」

「あ、数山さんだ、そうだそうだ」

 午前中、ぶつかった上に今度はわざとぶつかられた派遣の女の子を思い出した。そうそう、キツめの美人の数山さん。性格もキツいんだな、覚えとこう。

 美紀ちゃんがお箸を止めた。

「ん?亀山さん、あの人とまた何かあったんですか?バカにされたとか?」

「ううーん・・・まあそうダイレクトじゃなかったけどね」

「何何!何があったんですか!もう、負けないでくださいよ~、ここの正社員なんだから、胸はってください!」

「張るほど胸がないんだわ」

「誰がボリュームの話をしてるんですか!」

 さっきまで笑っていたのに、もう美紀ちゃんは怒っている。忙しいお嬢さんだわ。

「あなたが本当はどれだけ仕事の出来る人か、証明してやってください!今日の朝みたいにバリバリ片付けてくれたらそれでいいんですよ~!」

「・・・バリバリ。それって死語じゃないの?」


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