カメカミ幸福論
その時後ろを通りかかった営業2課の同期、小暮幸久がいきなり会話に入ってきた。
「何何、カメがついにやる気を出したって?」
「うわ・・・ビックリした。小暮君か、久しぶり」
背中からぬっと顔を出した男性同期に、私は正直にうんざりした顔を見せる。それを見て、前で美紀ちゃんがあはははと笑った。
「小暮課長、お疲れ様です」
美紀ちゃんに爽やかな会釈をしたあとで、彼は私に向かって顔を顰める。
「何だよカメ、その顔は」
「いやいきなり背後から突っ込まれたら誰だってビックリするでしょうが。何なのよあんた」
私の言葉に体を起こして、彼はぶーぶーと盛大に膨れる。何がぶーぶーだ、30のオッサンが、可愛くないっつーの。
私の同期入社は18人。その中でも群を抜いて明るい男、小暮幸久。彼はその明るくてマメな性格で飲み会の幹事をやることが多い。従って、我が同期は結構な頻度で飲み会を開いており、私にも頻繁に連絡をくれるので同期の中では一番話す相手でもあった。
ヤツはただ今営業2課の課長だ。同年代最速で課長までいった、優秀な男でもある。
「亀山先輩が、懐かしい仕事ぶりをみせてくれたんですよ~、それで盛り上がってました」
不機嫌そうな私の代わりに美紀ちゃんがそう言い、小暮がへえ、と相槌を打った。
「ついに窓際OL返上か?よしよし、いいぞ、カメ!折角女性の最上まで上り詰めたのにその後やる気なくしちゃって、皆心配してたんだぜー」