カメカミ幸福論
「バカ神と呼んだのを謝罪して訂正しろ、ムツミ。俺を侮辱するのもいい加減にしてくれ」
「なら私を生きる価値もないダメ女みたいに言ったことも訂正の上で謝罪しなさいよ!侮辱はお互い様でしょうが」
じとーっと見ていたら、ダンは渋い顔をしていたけれどもゆっくりと頷いた。それから、ボソッとではあるが、すまなかった、と謝った。
私はちょっと驚いてマジマジと見詰める。・・・おやまあ、謝ったよこいつ。うーん、神というのは案外素直でいい生き物(なのか?)かもねえ・・・。
だけど相手が謝ってしまったので、社会人として私も謝ることにする。給料は我慢代・・・いや、別にダンからお金は貰えないんだけど、とにかく幸福な記憶は貰えるそうだしね。
「私も悪かったわ。あなたのことをバカとかクソとか叫ぶのはしないように努力する」
両手を腰から離し、一応頭も下げておいて、それから意地悪そうな声を作って言ってやった。
「それで、ダン。カミサマの観察には、対象相手にセクハラしてもいいってことになってるの?」
ダンが首を捻った。
「セクハラ?」
「エロいことよ。電車であんた、私を急に抱きしめたでしょ」
ダンの口元がひゅっと上がった。・・・うわー、何だこの滅茶苦茶バカにした表情~!感じ、悪!
「あれが問題なのか?人間は、あれで性欲が刺激されるのか?俺はお前を素直な状態にしようと思っただけだ」
「素直!私はてっきり子供扱いされたのかと思ったわよ!抱きしめて頭を撫でるなんざ、母親のすることでしょうが。いい大人を子供扱い、つまり、バカにされたのかしらと思ったわけよ」