カメカミ幸福論


 私は無言で耳に小指を突っ込んだ。

 ぐりぐりぐり~。

「・・・おい、聞いているのか?ムツミ」

 相変わらずお子様で短気な(私に言われたくはないかもしれないけれども、そこは黙殺)男神であるダンが私に近寄ってくる。

 それも黙殺して今度はベッドの上に胡坐をかいて座り、ストレッチを始めた。

 ぽてぽてと近づいてきて、ダンは唇を尖らせて私を覗き込む。

「おーい、ムツミ~」

「ねえダン、知ってる?古今東西世界各地、一番嫌われる話は自慢話なんだってのよ」

「じ、自慢話?」

 その瞬いている美しいお目目をアイスピックで突き刺したいぜ。私ときたら相変わらず泣きはらした為に3割増しの不細工な目で、ヤツをガン見した。

「あんたのさっきの話はつまり、俺様ってば超美形だから女はバカみたいにホイホイ寄ってくるんだわ~ってヤツでしょ?きょーみないわ~悪いけど」

 何と、ヤツはショックを受けたようだった。ムンクの叫びそっくりの顔をして、呆然と突っ立っている。自信満々の俺様ドヤ顔は一瞬で消えた模様。私はそれにちょっとばかり満足した。

「・・・俺はそんなことは言わなかった」

「そう聞こえたわよ」

 断じて違う!ダンはそう言って、ぐいぐいと私に近づいた。


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