素顔のキスは残業後に
『俺達…別れた方がいい気がするんだ』


雅人にそう言われたときだって、
二人で話し合って解決することじゃなく、納得するふりをして回避することを選択した。


話し合っても結果は変わらなかったかもしれない。

だけど僅かな望みにすがるより、彼の言葉にこれ以上傷つくのを恐れた。

そうやっていつでも傷つく前の予防線を張り巡らせる。


こんな自分は古傷を負ったあの頃よりも、ずっとずっと弱くなってしまったと思う。

こんな自分を変えたいと思う。

だけど、その術が分からないでいる――


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