素顔のキスは残業後に
気付いて貰えたことを
どうしようもなく嬉しく思ってしまう自分がいる。


噛み締めていた唇に涙がするりと入りこむ。
慌てて俯いた頭にそっと落ちる指先の感触。髪に触れる指先の心地良さ。

止めなきゃいけないって思うのに、なんだかもっと泣きたくなってしまった。


しばらく泣き続けて気持ちが落ち着きかけた頃。
そっと顔を引き上げた。


至近距離で覗き込まれる瞳が切なげに歪んでいて、胸が締めつけられるように苦しい。

いつも自信満々で意地悪ばかりを言う彼には、いつも遠回りをして優しさを届けてくれる彼には、

そんな顔は似合わない。
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