素顔のキスは残業後に
花形さん! 

思わず脳内の呼び名が口から出てそうになって、なんとか呑みこむ。
一瞬迷った割にはものすごく強い力で彼の左腕を掴むと、眉間に深く皺を刻んだ顔が私を見下ろした。

「花形さんって、なに。もしかして俺のこと?」

ものすごくトーンの低い声に、数秒固まる。

呑んだはずの言葉、呑めてなかった……。

「えっと。違うんです! それは、なんていうか…そっ、そのっ。そう! 愛称みたいなもので。とにかく、すみません!!」

凄みのある顔にビビりながら言葉を続けると、「離せよ」とばかりに掴んでいる腕に視線が落ちて、慌てて腕を離した。

あぁ。やっぱり無理だ。諦めよう。

一瞬、そんな諦めモードになる。けれど、スタスタと歩み始めた彼の腕をすがるように掴んでいた。

「あの、もしよかったら…」

「なに?」
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