素顔のキスは残業後に
今日は私の用事に付き合って貰ったし。

夕食代は私が出すつもりでいたのに、
私がトイレに席を立っている間に柏原さんは会計を済ませてしまっていたらしい。


店の外で財布を出し合う真似。柏原さんは嫌がるよなぁ。


彼の性格を考えてそう思ったから、地下1階にあった店の外階段を上がったところで、
私から提案してみた。


「じゃぁ。次の1軒は私が出しますよ」


軽い立ち飲みバーとかだったら、まだ行く時間があるよね。
柏原さん。いつもより飲むペースを落としてたし。


今日は土曜の夜だし。当然次があるんだろうと思っていた。

けれど、雨が上がった夜空を仰いでいた彼は首を小さく横に振ってから、ポツリと言った。


「今日はもう帰る」

< 191 / 452 >

この作品をシェア

pagetop