素顔のキスは残業後に
備品室じゃ、ない?


戸惑いと胸を過った不安の影に胸が大きく震えて、

胸の奥で何かがざわつき始める。


痺れ出す頭があるシーンを呼び起こし、

片手を振って立ち去った五月さんに曖昧に笑うことしかできなかった。



この違和感を気のせいだと思いたい。

そんな祈るような気持ちで五月さんの言った非常階段に足を運ぶ。


でも柏原さんの姿はどこにもなくて、

こめかみを痺れさせる痛みが、ある可能性を弾き出す。



そんなまさか――……


それを否定するように静かに瞳を閉じてから、あの日『彼女』に言われた場所へ足を向けた。
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