素顔のキスは残業後に
あの日と同じように備品室の扉は壊れていた。
扉に触れようとして指先が震えたのは、隙間から流れ込む外気のせいじゃない。
聞き慣れた弱々しい女性の声が――……
鼓膜の奥まで響いた。
「やり直したいの。勝手だってわかってる。だけど私、やっぱりあなたのこと……柊司が好きなの」
いまにも消え入りそうな声は
私の周りにある色彩をすべて奪い去るもので、
胸の震えが全身へと広がっていく。
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