素顔のキスは残業後に
注文したブレンドが運ばれてくるのを待って

由梨さんは静かに語り出した。



「私が総務部から宣伝部に異動して、直属の部下が柏原くんになったの。

いまの彼からは想像もつかないだろうけど。仕事は出来るんだけど、どこか無気力な彼をどうにか変えたくてね。

最初の頃はずいぶん手を焼いたのよ」


そこで言葉を止めた彼女は、
ブレンドが入ったカップに手を添える。


ゆっくりと立ち昇る湯気の向う側には、懐かしむようにやわらいでいく瞳があった。

そんな由梨さんの瞳は初めて見るものだった
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