素顔のキスは残業後に




ホームまで見送ると言った私に由梨さんに首を横に振る。


彼女とは改札で別れて、私はいまJRの電車に揺られている。

忘年会帰りなのかスーツにお酒の匂いを染み込ませたサラリーマンで、車内は朝のラッシュのように混み合っていた。


電車が緩やかなカーブに差しかかり

吊革を持つ手に力を込める。


思いがけず力が入らないことに驚いて――…

そんな自分に傷ついた。


やけに息苦しい電車に揺られながら、由梨さんに言われた最後の言葉が頭から離れなかった。
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