素顔のキスは残業後に
『レストランで食事をした時、友花ちゃん言ってたよね。

難しいことを考えるより、彼といるいまの瞬間を大切にしたいって。その言葉に……気付かされたの。

世間体や仕事や年齢のこと。わずらわしい物をすべて取り除いたら、残った気持ちは一つだった。


どうしても彼とやり直したい。それが叶うなら、何を失くしてもいいって』


静かに語り続けた声はそこで途切れて

膝を向いていた由梨さんの視線をゆっくり引き上がる。


意思のある強さを持った瞳と視線が絡み合った。


彼女に言われたその言葉が重く胸にのしかかっていた。

あの日ひどく儚げに見えた由梨さんの手助けをしたい。


そう思った気持ちに嘘はない。
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