素顔のキスは残業後に
あまりにもまっすぐな響きが一瞬の静寂を呼び寄せて

次に会場はたくさんの拍手で包み込まれた。


今日一番の幸せな笑みで見つめ合うふたり。

冷やかすような声とフラッシュが向けられる。


私の隣に座っていた美香ちゃんも黒のフレアードレスの裾を翻して、カメラを持って立ち上がった。


総務部のテーブルを取り囲むように座っていた他の女の子達も、彼女につられてメインテーブルに駆けていく。


だけど私は――――……

立ち上がることもできなくて


熱く焼けつくまぶたの裏に、愛しさを滲ませた笑顔がくっきりと浮かび上がる。

幸せの熱で高めてくれた優しい声が

鼓膜まで響いた。


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