素顔のキスは残業後に
そんなサインを柏原さんが見逃すはずもなく、少しだけ体を起こした彼と至近距離で見つめ合うと、

トクンと高鳴る鼓動。


乾ききっていない唇をつぅーと親指でなぞられると、ハイブランドの香水に負けないだろう色気を纏った瞳で、

意地悪に囁かれた。


「教えてないのに、誘うのが上手くなったな」


「そっ、そんなつもりじゃ……」


「ない? ――だったら、もうやめる?」


スッと体を起こした柏原さんの肩に思わず触れてしまった自分の右手に、「コラッ!」と喝を入れてやりたい。


やっぱりね。

わかってましたけどね。

コロコロと掌の上で自由自在に転がされちゃうんだよね。

否定しておきながら馬鹿正直に動いてしまった自分の右手が恥ずかしくて堪らない。


< 431 / 452 >

この作品をシェア

pagetop