素顔のキスは残業後に
「出てもいいのか?」


「いいですよ。だって急用かもしれないですし」


そう言って少し柏原さんから距離を取ると、「へぇー」なんて他人事全開の声を返され、

体を起こした柏原さんがスマホを手に取った。


電話の邪魔したら悪いよね。

そう思いベッドから足を滑らせようとすると、離れたばかりの温もりが背中を包み込み


「えっ」と息を呑む間もなく――

柏原さんの腕がお腹の位置まで落ちてくると、ぎゅっと強く抱きしめられる。

今日一番の意地悪な囁きが耳元に落ちた。



「このまま電話に出ろって、言ったよな?」


あまりにもぶっ飛んだ言葉に、喉からヒュッと変な息が漏れる。


このままだなんて言ってない!

必死に唇を動かしてエア否定をしてみるけど。

そんなモン何の効果もないのは、もう何度も実践済みってやつで。

「ふっ」と楽しげな吐息を漏らした柏原さんは、私を抱き寄せたお腹の前で器用にスマホの液晶画面をスライドさせた。


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