素顔のキスは残業後に
一瞬見えた液晶画面に浮かび上がっていた名前は宣伝部の名物部長だっていうのに。

柏原さんは表情一つ変えずスマホを耳に押し当てる。


「はい。柏原です」


つい数秒前まで私をいじり倒していた唇が一瞬で仕事モードな声を吐き出すと、


「おうっ! お疲れのところ悪いなぁ」


スマホから漏れ聞こえた明るい声に、「ぶっ」と思いっきり吹き出してしまう。


おっ、お疲れって! ななっ、なんで、それをご存じで!?

(それはそれは、何度も。えぇまぁ、イロイロとお疲れなんですけど!!)

まっ、まさか! カーテンの隙間が開いてたとか!?


ハッと息を呑み寝室の窓に視線を動かす。

すると心底呆れた瞳が私を見つめていて、「うろたえるな、バカ」と目で訴えられた。

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