素顔のキスは残業後に
「あぁ。うちの猫がまだ眠いみたいで、欠伸しただけです」


「おならとか欠伸とか、朝から忙しいネコちゃんだな」


シラッと答える柏原さんの言葉を1ミリも疑わない部長から「がははっ」なんて豪快な笑い声が漏れると、

柏原さんもそれに合わせて笑っちゃってるし!


もう完全に柏原さんのおもちゃ――……

いや、ペットだよね私。


心で愚痴りながら楽しげ笑うご主人様のいたずらに備え、膨れっ面で身構えると、


「えぇ。飼い始めたばかりでしつけ甲斐ありますよ。でも――……」


私の耳元で囁く声がそこで止まると、お腹をなぞり出す指先の動きもピタリとその動きを止める。


おっ。膨れっ面の効果あり?

タチの悪いイタズラにもようやく飽きてくれたのかとホッと胸を撫で下ろした、次の瞬間。


逞しい両腕がふわっと私の体を抱き寄せる。

それまでとは違う包み込むような優しさを背中から感じて、トクンと震える鼓動。

それを加速させる囁きが耳朶に触れた。
< 437 / 452 >

この作品をシェア

pagetop