素顔のキスは残業後に
「抱き心地は最高で、可愛い奴なんです」


不意打ちに届けられた言葉。息をするのを数秒忘れる。

少し照れたような声。多分、気のせいじゃない。


それを確かめたくて――……

顔をそっと横に向けようとしたら、抱き締められた腕にぎゅっと力が込められる。


胸を過った予感をYESとするそんな仕草に、胸の奥がキュッと締めつけられ、嬉しい悲鳴を上げる。


少し前の意地悪を一瞬で無しとする早業に、「やっぱりずるいよ、柏原さん」と心で愚痴ると、

スマホ越しから楽しげな声が届いた。


「ははっ、べた惚れだなぁ。もしかして一目惚れか?」


冷やかすような部長の言葉に、

今度はどんな言葉を返すんだろう?


胸を高鳴らせて答えを待ってしまう自分は――……

意地悪で、でも遠回りをして愛情を伝えるご主人様に、手懐けられたペットと変わらないと思う。


でも、それもいいかもしれない。

ふっと口元を緩めて背中にある温もりに体を預けると、


「あぁ。そうかもしれないですね」


優しい響きを漏らした唇がそっと頬に落ちてきた。

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