素顔のキスは残業後に
数時間後。12月31日 PM23:30



「本当に、行かなくてよかったんですか?」


「いいだろ。部長も大晦日に猫を一人にしたら可哀そうとか言ってたし」


「結局、それで乗り切っちゃいましたね」


「あの顔で猫を溺愛するとか、似合わないにも程がある」


「そんな――……まぁ、ちょっとは思いましたけど」



猫好きな部長の用件は、大阪支社から来ている次長との『朝まで頑張ろう! 年越し飲み会』に彼を誘うものだったけれど。


柏原さんのついた嘘を最後まで信じきった部長は、彼の溺愛する子猫のトモに遠慮したみたいで、

(名前を聞かれて迷うことなく『トモです』とさらっと答えてましたよ、ハイ……)


「まぁ。こんな日に予定がない奴もいないとは思ったけどな。次長はお前さんをお気に入りだから、電話しろって煩くてな。

まぁ、俺から上手く言っておくわ。でもなぁ、柏原。

猫を溺愛するのもいいけど。派手に交際宣言した噂の彼女も大切にしないと、愛想つかされるぞぉ?」

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