素顔のキスは残業後に
あぁ、五月さんったら。

結局一度も命中させることが出来なくて悔しそうだなぁ。


五月さんに哀れみの視線を流すと、彼女は最後のおしぼり弾でグロスが剥がれた唇を尖らせる。

そしてなにかを思いついたように、ニヤッと彼女の唇が引き上がった。


「でもさぁー、珍しいよねぇ。猫かぶり柊司の猫耳がないなんてさ」

「あ?」


「ねね。やっぱりぃー、噂通り友花ちゃんと柊司って、デキてるの?」

「ぶっ!」


柏葉さんではなく、私の口からカクテルが吹きこぼれる。

そんな私に「うろたえるな、バカ」と一喝した柏原さんは、落ち着き払った瞳を五月さんに向けた。
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