素顔のキスは残業後に
大切にしている……つもりだった。


『友花、愛してる』


何度も雅人がくれた言葉は、いつだって私を幸福な気持ちで満たしてくれた。


だけど私は、どれくらい彼に応えることができただろう。

恥ずかしいとか、忙しいとか、ついつい忘れてとか。

そんなつまらない理由から伝えることの大切さを

手の触れる距離にある幸せをいつしか意識しないで過ごすようになっていた。


別れを告げたのは雅人だ。

だけど先の見えない未来を夢見るばかりで一番大事なことに気付けなかった私が、この恋を終わらせた。


変わらない想いなんてない。
不確かなものだからこそ大切にしないといけなかった。

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