素顔のキスは残業後に
それを堪えていると今度は嗚咽だけが漏れそうになる。

だから彼は、もっと強い音を響かせる――…

優しい気遣いが嬉しくて、視界が歪んでいく。喉の奥が震えて声にならない。



静かな沈黙だけが流れていく。

強がっているだけで、本当はちっとも強くない。

そんな私を簡単に見透かしてしまう彼は、私の気持ちが落ち着くまで黙ってくれてる彼は、
すごく優しい人だ。


すごくすごく優しくて、

だから矛盾してるけど、その優しさに気付きたくなかった。


だって一度触れたら体ごと寄り掛かってしまいたくなる。
その心地良さに甘えてしまったら、もうひとりで自分の体を支えることができなくなってしまうから。


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