スタートライン~私と先生と彼~【完結】
先生は職員室から出て来て、私たちの練習を見てくれた。
外に出て来て気付いたが、先生はお決まりのスーツ姿ではなくて、ポロシャツにジーンズといったラフな恰好をしていた。
そのレアな服装を見るだけで私の胸は高鳴っていたが、決して口に出すことはできなかった。
私が我慢しているのも知らずに、みんなは先生に寄って行き、『かっこいい』などと、褒めまくっていた。
そして、少し照れ臭そうにしている先生の姿を見るのが嫌で、木陰に座り、私はお茶を飲んでいた。
夢中て練習をしていたので、Tシャツの色が変わるくらい汗をかいていた。
それもそのはず、今日はこの夏1番の暑さ。蝉の鳴き声で音楽も聞こえづらい。
先生が見ていると思ったら、緊張して動けない。
でも自分の顔が笑顔になっているのがわかる。
「俺、職員室に戻らなあかんから、行くぞ。熱中症にならんようにちゃんと休憩して水分とれよ!」
先生はそれだけを言って、職員室へ戻った。
先生が通り過ぎた時だけ、さわやかな風が吹いたように感じた。