スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「さっちゃん、ただいま〜」
隆はいつものように元気よく玄関のドアを開けた。私は、できるだけ平常心を保とうとした。
「隆、今日は何食べる?」
うん大丈夫。いつも通りにできてる。
「えっとね、きんぴらごぼうが食べたいな」
「また?ハンバーグにしない?」
「そうだっけ?ハンバーグもいいけど、きんぴらも!」
「了解」
よかった。
うまくごまかせてるみたい。
この調子で、後で言うことにしよう。
「じゃあ、隆は挽き肉を混ぜてね」
「はぁい」
ここ何ヶ月かで隆のレパートリーは増えている。
初めは、お味噌汁さえ作れなかったのに、今では煮物も上手に作ることが出来る。
でも今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
「いただきま〜す」
「んまい!」
私は豪快に口いっぱいに頬張る隆の食べる姿も好き。
細身だけどよく食べるから作り甲斐もある。
そんなことより・・・・・・言わないと。
「あっそう、私ね、赴任先が決まったんよ」
「そうなんや〜!」
笑顔で答えてくれる隆の顔を見ると、辛くなる。
「うん。どこやと思う?」
できるだけ、普段とおりに・・・。
「どこかな〜?俺の母校とか?」
「不正解。正解は、大慶高校!」
「まじで?沙知の母校やん!」
そう言う隆は笑顔で・・・私はさらに胸が苦しくなった。
「そうやねん。なんかすごいよね〜」
そう、すごいけど、今の私にとっては迷惑やわ・・・。
「運命やね」
隆はハンバーグを食べながら言った。
運命・・・。誰との運命??
隆は何気に言ったつもりかもしれないけど、私には重い言葉に感じた。
「沙知は、大慶高校から逃れられないのだ!」と笑いながら隆は言ったが、私はきっと上手く笑えていない。
ははっ、大慶高校との運命ね・・・。
隆は忘れてるのかな?
先生のこと・・・。
もし覚えてるとしたら、こんなこと言えるなんてすごいよ。