スタートライン~私と先生と彼~【完結】
隆が研修へ行って1週間。
もうすでに寂しい。
でも毎日くれる電話によって少しだけ元気になれる。
明日から、私も社会人1年生がスタートする。
私は不安でしかたない。
どんな顔をしてあの人に会えばいいの?
私は、今でも卒業式の日のあの寂しそうな顔を忘れられない。
『憧れ』なら忘れさせて。
会って、忘れさせて。
私には隆がいるんやから。
お願いだから、私の中に入ってこないで・・・。
『もしもし、さっちゃん?今大丈夫?明日から学校やね』
隆の声は、いつ聞いても穏やかで落ち着く。
「うん。準備もしたし大丈夫」
『俺さ、やっぱり言っておかないとあかんと思って・・・』
急に低くなった声と共に、私は嫌な予感がした。
「何を?」
『先生のこと』
「先生?」
一瞬にして、体中がこわばるのがわかった。
『俺さ、先生の気持ちを知ってたんや』
「えっ?」
『卒業式の日、「原田を頼む」って言われたんや』
えっ?『原田を頼む』って?
「・・・・・・」
『先生は、沙知が自分に好意を寄せている事に気付いていた。でも、その気持ちは「憧れ」でしかないって言ってた・・・・・』
「憧れ・・・」
先生は私の事は、生徒としか思ってなかったんや。
じゃあ、なんであんな悲しい顔をしたんよ・・・。
『沙知、その時・・・先生は涙を浮かべていたんやで』
「えっ?」
先生が?
『沙知、わかるやんな?先生の気持ち』
「・・・・うん」
やっぱり同じ気持ちやったんや・・・。
でも、私の事を考えて伝えないようにしてくれたんやね。
でも先生、それは間違ってるよ。
先生が受け入れてくれなかったから、隆まで傷つけてしまった。
『だからさ、俺の事は気にしなくていいから』
「えっ?」
『先生に会って、まだ好きだったら・・・先生の所へいっていいから』
「でも・・・」
『沙知、俺だって、俺の事が好きな子と付き合いたいからね』
隆・・・。
胸が締め付けられるような想いだった。
「でも、もう4年経ってるんやで?先生だって・・・」
『その時は俺が慰めてやるよ』
「うん」
私は、こんなことを言いたいんじゃない。
『じゃあ、沙知、明日から頑張ってね』
「隆・・・もう・・・」
もう電話してくれないの??
『また明日、電話していい?』
「うん。もちろん」
『ありがとう。愛してるよ、沙知』
「うん」
電話を切ったあと、私は泣き崩れた。
なんで?なんであんなこと言うの?
しかも最後になんで『愛してる』なんて言うの?
ダムが決壊してしまったように涙が止まらない・・・・・。
なんで、私は否定しなかったの?
なんで・・・できなかった?
そんなことをグルグルとっ考えていたら、眠ることができなかった。