スタートライン~私と先生と彼~【完結】



その日の夕方、いつものようにさっちゃんが俺の部屋で夕食を作ってくれている。

俺は、あの男のことを聞きたかった。

でも、聞けずにいた。そんな俺の変化に気付いて聞いてくれた。


「何かあるなら言ってね」


言うよ?大丈夫?


「・・・さっちゃん、さっちゃんのバイト先にいる男の人さ・・・」


俺が話始めた途端、さっちゃんは箸を止めて、目を見開いて俺の方を見た。


何???


動揺してるの?



「・・・あの人がうちの店に来て」


「はぁ?なんで中野さんが?」

でもその反応おかしくない?

なんでそんなに慌てるの?


「まぁ、はじめは偶然やと思うんやけど・・・」

「そ、そう」


さっちゃんは、目を泳がせながらも、動揺を隠そうとしていた。しかし、全くそんな繕いはムダで、バレバレだった。


「沙知って呼んでた・・・」

「はぁ??????」


俺はさっちゃんの声に驚いて何も言えなかった。


「意味わからんし!あと、何か言われた?」


さっちゃんは、箸を乱暴にテーブルに置き、眉間にしわを寄せていた。

こんな表情見たことないし・・・。

可愛い顔が台無しですよ・・・とも言えず・・・ただ彼女の迫力に圧倒されていた。


「俺はただの友達だとか・・・、中野さんと付き合うとか・・・」


これ以上怒らせてはいけないと思いながらも、全てを話した。

そうすると、一段と怒りのオーラが大きくなり、

「あの男!許さん!」

と、今までで聞いたことがないような低くて大きな声を出した。


さっちゃんがキレてる・・・。

結構、怖い・・・。


・・・・・・でもよかった。


「よかった。みんな嘘やったんやね」

「当たり前やん!」


さっきの剣幕はどこにやら、さっちゃんはいつもの笑顔を俺に向けてくれた。

やっぱり笑顔が可愛い。

「よかった〜」


俺は目の前の愛おしい人を抱きしめた。

さっちゃんも中野に言われた嘘を気にしていたみたいだった。

俺がさっちゃん以外と食事になんて行くわけないやん。


「俺、何を言われても負けないからね」


「うん」


俺の胸の中で頷くさっちゃんをさらに強く抱きしめた。


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