スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「あっ!あの時の!」
俺たちは、二人の声に驚いた。
「えっ?何?お前ら知り合いなわけ?」
俺はさっちゃんと涼の顔を交互に見た。
涼が中学生の時、電車で痴漢に遭ってたのをさっちゃんが助けてくれたらしい。
それ以来、電車に乗っても会うことができなかったから、涼はかなりテンション高くなっていた。
その後も涼はさっちゃんの隣を俺に譲ろうとはしなかった。
涼は興奮気味にずっと話しているが、さっちゃんは嫌な顔せずに、付き合ってくれている。
涼はさっちゃんの言うことなら聞くみたいで、普段はしない手伝いをしている。
まだ喋ってるし。
俺が台所の3人を見ていたら、父さんが話し掛けてきた。
「いい子やな。父さんが隆と同級生やったら、狙うな」
父さんは、にんまりと笑いながら俺に向かって言った。
「息子に言う台詞じゃないで」
この親父ありえへんし!
「それくらい魅力的ってことやな。取られないように、ちゃんと捕まえておけよ」
わかってるよ。
俺はいつもビクビクしてるんや。
友達にさっちゃんを会わせると、必ず羨ましがられる。
奪おうと考えてるのではないかと考えると、夜も寝れないこともある。
考えすぎなんやろうけど、それくらい不安になる。
それに、あいつの存在もあるし。
「それにしても、涼のあんな笑顔を見たのは久しぶりやな」
父さんの意外な言葉に驚いた。
確かに今日の涼はテンションが高いが、普段からよくしゃべる方だから気にも留めていなかった。
「あいつ、お前が家を出てからなんとなく元気がなくてな・・・。母さんとどうしたらいいか考えてたんや・・・」
そうやったんや。
普段見せることのない裏の涼を知ったような気がした。
「あいつも寂しかったんやな。昔から、お兄ちゃんが大好きな子やったからな」
そう。涼はいつも俺の後をついて来ていた。
小学生の頃も、同級生の女の子と遊ぶよりも俺らの友達と遊んでいたくらいだ。
高校も俺と同じところへ行くと言っていたが、あの痴漢事件以来、大慶高校へ行くと言い出したんだ。
あいつもさっちゃんに女性として一目惚れしたんやな・・・。
同じ相手に一目惚れした涼の姿を見て、嬉しく思った。
「お兄ちゃん!さっちゃんのことじろじろ見すぎ!キモいで!」
「兄貴に向かってキモいはないやろ!」
俺は新たに現れたライバルに向かって言った。
でも涼には勝てないな。
俺はひそかにそう思った。
そして俺はさっちゃんを家まで送った。
涼があんなにもうるさく付き纏ったのに、嫌な顔なんてしなかった。
むしろ、嬉しそう。その表情に偽りはなかった。
そんな優しいさっちゃんが、俺は大好きです。
絶対に手放したりしないよ。
俺は帰りの電車に揺られながら、二人の未来を思った。