スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「ごめんね。変なことに巻き込んで」
「気にせんでいいし。それにしてもさ、さっちゃん、かっこよかったなぁ」
嵐が去った後、俺らはゆっくりと歩き始めた。
『先生と生徒は・・・世間からはあまり認められるものじゃない。
だから、私は受け入れることはできないんよ』
さっちゃん、今でも不安はあるけど、今君の隣にいるのは俺なんだ。
俺がしっかり君のことを見ているからね。
だから、辛くなんてないんだよ。
「隆、ごめんね。長い間待たせて」
俯くさっちゃんは、静かにそう言った。
「いいよ。俺は今ここに、さっちゃんが居てくれることが嬉しいから」
三島に会ってから、厳しい表情をしていただろうから、さっちゃんを安心させるためにも笑顔を見せた。
「あっ、隆、さっき『沙知』って呼んでくれたよね?」
あっ、気づいていないと思っていたけど・・気づいてました?しかも聞きます?
「あっ、いや、あれは、カッコつけたかったというか・・・」
本当にダサいけど、ただカッコつけたかっただけ。
『さっちゃん』って呼んでるより、『沙知』って名前で呼んだほうが、彼氏っぽいというか・・・威厳がありそうな・・・?
俺がしどろもどろになっている様子を目の前のさっちゃんは、嬉しそうに見ていた。
何がそんなに楽しいんだ?
「ふふっ、ねぇ、沙知って呼んでよ」
思ってもいなかった言葉を言われ――しかも俺の顔を覗き込みながら――俺の顔は沸点に達した。
おそらく、ゆでダコのように真っ赤になっていたに違いない。
目の前には、目を輝かして期待している・・・いや、どこか意地悪そうな表情の沙知。
これは言わないと許してくれなさそう。でも、改めて呼ぶのは照れるといいうか・・・。
「さ・・・ち」
俺は、小さな声でしか呼ぶことができなかった。
そんな俺に対して、
「なんで、名前呼ぶだけで真っ赤になってるのよ!」
と思い切り背中を叩いてきた。
馬鹿な男・・・情けない男だと思っているのだろうな。
でも、そんな俺を見てくれている沙知・・・いや、沙知を俺はずっと見つめていたいんだよ。