メトロノーム

「おまたせしました」


なんとか平常心を装ってカクテルを振る。

グラスを差し出すまでに、すでに二本の吸殻が灰皿にくたばっていた。
どちらも先っぽしか吸っていない。


「何これ」

エメラルドグリーンの液体が入ったグラスを見て、あなたは怪訝そうにしかめた。


「飲んでみて」


私は笑顔で返す。

ふと、気付いた。彼の瞳が、ささやかながら、色づいているように見える。

彼が私に目を合わせている。


「甘。…ミント?」

「チョコミント。たまには甘いのもいいかなと思って」


少しでも優しさを与えたかった。

柔らかいものをあげたかった。
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