呉服屋の若旦那に恋しました


「桜は、天国に行ったんや……。からだが弱くて、一日しか生きれへんかった……」

「え……」

「本当は、俺が行く運命やったんやっ……、それやのに、俺やない人がもう一人今も生死の危機にさらされとる……っ、俺のせいで!」

「志貴……兄ちゃ」

「……俺が……俺が死ねばよかったんや……!! 俺があの時死ぬはずやったんや!!」

「……」

「俺が死ねばよかったんや!!」

「嫌だ!」


私は、志貴と同じように、いつの間にか号泣していた。

そして、震えてる志貴の手を握って、擦りきれた声で、訴えた。


「志貴兄ちゃんまで、しんじゃやだっ……」

「っ……」

「衣都は、志貴兄ちゃん、好きだもんっ……」


―――多分私は、どこか本能で分かっていた。

お母さんの命がもうあと残り少ない状態にあることを。

分かっていた。

志貴が、今本気で自分が死ねばいいと思っていることを。

それを止められるのは、自分しかいないということを。


「衣都は、志貴兄ちゃんいなくなったら、悲しいよ……っ」

「そんな……ことを、衣都に言って貰える資格は、俺には……」


そう言って、志貴は顔を手で覆った。

私は、バカみたいにぼろぼろ涙を流して、志貴の手をもっと強く握った。


「志貴兄ちゃん、あのね」


―――私は、分かっていたんだ。

志貴が、今本気で自分が死ねばいいと思っていることを。

それを止められるのは、今自分しかいないということを。


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