呉服屋の若旦那に恋しました


「それが、ずっとこの19年間、引っかかってて……」


話し終え、2人の顔を恐る恐る見上げた。

静枝さんは、なんだか泣きそうな顔をしていて、省三さんは、本当に心の底から大切なものを見るような優しい瞳で、私を見ていた。

私は、そのことに動揺して、思わず表情を固まらせた。

省三さんが、ゆっくりと口火を切った。


「ありがとう、衣都ちゃん……。衣都ちゃんがそん時志貴のそばにおってくれて、ほんまに良かった……」

「え……」

「ありがとう」


私は、何故今お礼を言われているのか、さっぱり分からなかった。

懺悔のつもりで話したのに、静枝さんはいよいよ本当に涙を流してしまった。

私はひたすら頭に疑問符を並べることしかできなかった。

静枝さんは、そんな私に、すすり泣きながら、ゆっくりこう語った。語ったというより、自分で納得していくようだった。


「そうやったんやね……志貴と衣都ちゃんの間には、そんなに強い糸が……」

「静枝さん……?」

「桜もきっと、衣都ちゃんがおってくれて、安心してるはずや」

「え……」

「志貴にとって衣都ちゃんは、ほんまに天使みたいな子やったんやろな……」

「そ、そんな、私は志貴に嘘を」

「志貴がそれを聞いたらきっと……」

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