呉服屋の若旦那に恋しました
私は、あの言葉を聞いたとき、どれだけ私のあの一言が、志貴に大きな影響を与えてしまったのかを知った。
謝らなきゃって、思った。
4年も会っていなければ、志貴もあんな私の台詞、忘れてるだろうって思ってた。
私なんか、いてもいなくても変わらない存在になっているだろうって。
結婚して、子供もうまれて、私の知らない志貴になっているのだろうって。
でも、違った。
私があんなこと、言っちゃったから。
「……え、おわ! 衣都、いつの間に帰って来てたんや?!」
ご仏壇のある部屋から出てきた志貴が、縁側で体育座りをしている私を見て驚いた。
志貴って、驚いたりすると、自然と関西弁に戻るんだな。今気づいた。
私は、体育座りのまま、雪柳を見つめていた。
「……今朝は、悪かった」
志貴が、ぽつりと呟いた。
本当に私を泣かせてしまったのは自分だと勘違いしているようだ。
私は、そんな志貴の優しさにますます胸が痛くなった。
彼が同じように横に座った。少しだけ、お線香の香りがした。
「……謝るのは、私の方だよ、志貴」
今度は私が、ぽつりと呟いた。
志貴は、どうした? と言って、私の顔を覗き込んだ。
私は思わず、志貴に抱き着いた。彼はかなり驚いていたけど、私は構わずぎゅっと抱き着いた。お前地味に抱き着き癖あるよな、と彼が困ったように笑った。
あのことを話さなきゃ、この距離はもう縮まらない。
だから、ちゃんと向き合わなきゃ。