呉服屋の若旦那に恋しました
「俺は、あの時、俺の為に号泣して、俺の為についたことのない嘘をついて、必死に俺に生きて欲しいと願ってくれてる衣都に、助けられたんだ……」
「……」
「衣都がいてくれ良かったって、この子に出会えて良かったって、本当にそう思ったよ……」
「でもっ……」
「俺は、特別衣都に優しくしたつもりはない。優しくしようとして優しくしたことなんか、一度もない」
「………」
「俺は、ただ単純に、衣都が大切だったから、手を繋いでいたかったし、入学式にも全部出たかったし、衣都の成長をずっと見守っていたいと、そう思った。全部自分の意思でしたことだ」
「っ……」
「前に言った、衣都が思っている以上に、っていうのは、そういうことだよ、衣都……」
――――胸の中でずっと痞えていたものが、志貴の言葉で溶けていく。
ずっと、志貴の優しさが怖かった。
ずっと、志貴に罪悪感を感じてた。
でもそれは、とんだ勘違いだとあなたは言う。
そんなことで悩んでいた私を許さないと、あなたは言う。
私がついた嘘は、自分を救ってくれたのだと、あなたは、言う。
“衣都、ありがとうっ……、衣都がいてくれて、良かったっ……”。
あの言葉は、本当に本心だったのだと、あなたは――……
「志貴っ…、私、志貴のそばにずっといていいの……?」
自分でも笑ってしまうくらい、震えた声が出た。
でも志貴は、笑わなかった。
かわりに私の手を両手で包み込んだ。そして、うんと優しい声で囁いた。
「ずっとそばにいてほしい」